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社会・文化

「ふるさと住民登録」は詐欺政策

「地方創生」と逆行する石破政権

2025年9月号

「本筋をやってほしい。われわれが解決したいこととかけ離れたおとぎ話をされても困る。怒りではなく、悲しみを覚える」
 島根県の丸山達也知事が今年6月の会見で放った言葉は、霞が関と地方との断絶を突きつけた。それは、政府が新たに打ち出した「ふるさと住民登録制度」の虚飾を見抜いた発言である。
 政府は同月、仕事や趣味などを通じ、居住地以外の地域に継続的に関わる「関係人口」をめぐり、今後10年で実人数1千万人、延べ人数1億人を目指す方針を示した。これを実現するための目玉施策が、「ふるさと住民登録制度」の創設である。専用アプリで登録すると、自治体が「登録証」を発行、地域からの情報が届いたり、行政サービスの一部を利用できたりする仕組みを想定している。
 現在、地域政策において関係人口はバズワードとなっている。官民学を問わず、多くの団体がこの概念に着目し、期待している。理由の一つは、移住政策とは異なり、人口減少社会においても、人材の奪い合いにならない点にあると言われることが多い。
 だが、現場の切迫した課題を前に、この制度はあまりに頼りないと筆者は感じている。公・・・

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