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ロシアの静かなる「欧州侵略」

軍事・諜報工作強化と「米国の黙認」

2025年10月号

 ロシアのウラジーミル・プーチン政権が欧州への挑発を繰り返している。ロシア軍のドローンや戦闘機がポーランド、ルーマニア、エストニアの領空を相次ぎ侵犯し、欧州で一気に警戒が強まった。プーチン政権は軍事的な威圧に工作活動を絡めた心理戦により、静かな侵略を進めている。
 ロシアは同盟国ベラルーシとの大規模な合同軍事演習(9月12~16日)に合わせて東欧の領空を侵犯した。9月10日にドローンがポーランドに侵入した当初は北大西洋条約機構(NATO)内でも故意かどうかの判断が割れていたが、13日にはドローンがルーマニア領空も侵犯、19日には戦闘機3機がエストニア領空を侵し、緊張をあおるロシアの意図が露わになった、
 ロシアはポーランド領空の侵犯と同時に情報工作も展開した。ソーシャルメディアの「テレグラム」や「Ⅹ」を通じて偽情報を流し、地元の極右政治家らもこれを拡散したため、ネット上はこんな陰謀論であふれた。
「ポーランドとNATOを戦争に引き込もうとするウクライナの偽旗作戦だ」「ポーランド首相ドナルド・トゥスクはこれを利用してウクライナに軍を派遣しようとしている」「ウ・・・

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