《企業研究》三菱商事
洋上風力「全放棄」の我利我欲
2025年10月号
NTTはすでに興醒めしていたのだ。首脳の一人は東京電力の幹部にある失望を打ち明けていた。
「三菱商事とはうまくいっていない。あいつら、来るたびに価格が違う。信用できない」
2022年夏のことである。実は当時、NTTと東電の間では再生可能エネルギーをめぐる提携交渉が佳境を迎えていた。40年に脱炭素達成を掲げるNTTは一方、データセンターの大幅増強を計画しており、再エネの調達が焦眉の急となっていたのだ。交渉は東電の再エネ子会社、さらに送配電子会社へのNTTの資本参加に発展、実現すれば通信と電力の“最大手連合”が誕生する。
しかし、この2年半余り前、NTTは同じく大型提携を三菱商事と結んでいたのである。
「わが社のテクノロジーと三菱商事の産業分野の知見を組み合わせ、社会のDX(デジタル変革)化を加速していきたい」
19年12月の提携会見の席上、こう語る当時の澤田純NTT社長(現会長)の隣には、満面の笑みを浮かべて三菱商事の垣内威彦社長(同)が座っていた。両社長は1955年生まれの同い齢、大学も同じ京都大学。澤田・・・
「三菱商事とはうまくいっていない。あいつら、来るたびに価格が違う。信用できない」
2022年夏のことである。実は当時、NTTと東電の間では再生可能エネルギーをめぐる提携交渉が佳境を迎えていた。40年に脱炭素達成を掲げるNTTは一方、データセンターの大幅増強を計画しており、再エネの調達が焦眉の急となっていたのだ。交渉は東電の再エネ子会社、さらに送配電子会社へのNTTの資本参加に発展、実現すれば通信と電力の“最大手連合”が誕生する。
しかし、この2年半余り前、NTTは同じく大型提携を三菱商事と結んでいたのである。
「わが社のテクノロジーと三菱商事の産業分野の知見を組み合わせ、社会のDX(デジタル変革)化を加速していきたい」
19年12月の提携会見の席上、こう語る当時の澤田純NTT社長(現会長)の隣には、満面の笑みを浮かべて三菱商事の垣内威彦社長(同)が座っていた。両社長は1955年生まれの同い齢、大学も同じ京都大学。澤田・・・