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Book Reviewing Globe 498

移ろいゆく米国の国家安全保障

2025年11月号

 トランプ政権の安全保障政策は、共和、民主を問わずに戦後の米政権が追求してきた安全保障観とは明らかに異質である。
 敵対国の方に気を遣い、同盟国をないがしろにする。同盟国を“家来”か保護国のように扱い、“みかじめ料”を求める。米軍駐留や空母の派遣についても“使用料”の“取り立て”と“払い戻し”を言い立てる。脅威は外敵よりむしろ「国境の南」からの不法移民や“woke”文化にある。対処すべき焦点を、世界の不確実性(同盟抑止力弱体化、国家破綻、テロ、気候変動、パンデミック)ではなく米本国の防衛と治安に据える。米国の国家安全保障の概念そのものが根底から変質しつつある。
 しかし、建国以来、米国の中心的な安全保障観はトランプ的な“一国防衛主義”だった。東西を大西洋と太平洋に囲まれ、南北をメキシコとカナダに挟まれた米国は、世界で稀有の「安全保障タダ(free security)」国家だったからである。
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