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経済

《クローズ・アップ》山村 明義(東京メトロ前社長)

不適切言動「辞任劇」の深層

2025年11月号

 悲願だった東証プライム市場への上場を果たしてからちょうど1年、社員への「不適切言動」によって、社長だった山村明義は経営から退場を余儀なくされた。
 10月10日に取締役辞任を発表した東京メトロはご多分に漏れず、「被害者保護」を理由に発言の中身についての説明を拒んだ。社内で配布された文書でも具体的な説明はなかった上、「対象社員について詮索等を行わないよう」通達。緘口令が敷かれた辞任の背景に何があったのか。
 山村は2017年に社長就任後、東京メトロの株式上場に向けて先頭に立ってきた。社内の人物評は「謹厳実直で真面目」「下品な言動とか、お金に汚いという話はない」という一方、「瞬間湯沸かし器」とも渾名される。とすると、不適切発言はパワハラか。もっとも、関係者によれば、社長就任後、一般社員への対応は穏やかだったといい、幹部には違う顔を見せていたのかもしれない。
 もともと、東北大学工学部土木工学科出身の「線路屋」。鉄道会社全般に言えることだが、現場に関わる部署ほどパワハラが多い。列車運行や作業中のミスは命に関わるから、指導は厳しくなりがち。大卒技術職がずっと現場・・・

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