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社会・文化

映画人レッドフォードが描いた理想

今の米国を予告した「リベラル俳優」

2025年11月号

 ロバート・レッドフォード演じる大学教授は、無気力な学生トッドにこう問い掛ける。
「この戦争を始めた奴らは救い難い。だが、手をつかねて見ているだけの我々はどうなんだ」
 2007年公開のハリウッド映画『大いなる陰謀』のワンシーン―。大学教授が語る“この戦争”とは、当時の共和党ジョージ・W・ブッシュ政権が始めたイラク戦争である。
 01年9月11日の同時多発テロは、米国を復讐の狂気に染め上げた。しかし、テロ組織アルカイダの後ろ盾とされるイラクを制圧してみると、大量破壊兵器は発見されず、一方、米兵の死が連日報じられる。戦争の大義が揺らぐ中、米国には厭世観が広がっていた。
 その世相に強い違和感をもち、レッドフォード自ら出演、監督を務めたのが『大いなる陰謀』である。公開から18年、翻って米国の現状はどうか―。
 共和党大統領ドナルド・トランプは「七つの戦争を終わらせた」と妄言を吐いている。批判的なメディアへの圧力は強く、とりわけ電波免許剝奪をチラつかせ、ABCテレビの人気番組を休止に追い込む暴挙に出た。レッドフォードは・・・

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