テイレシアスの食卓 vol.33
テーブルマナーを守る意義
河井 健司
2025年12月号
食べ物を口に運んだあと、カトラリーは下ろして手から離すこと。決してナイフとフォークを握ったまま咀嚼してはならない。
テーブルマナーの中でも、当たり前とされている所作だ。しかし、これが思いのほか日本の社会に浸透していない。伝統的な箸の文化は大切にする一方で、幼少期からナイフとフォークの正しい使い方を、家庭で繰り返し教わった経験がある人は限られるだろうから、残念ながら仕方ないことのように思う。しかし、学問だけではなく教養と知識も得られるはずの学校教育の現場で、多くの人が経験する食事の作法が身につかないのはどうしたことか。指南役の能力不足を疑わざるを得ない。
ホテルやレストラン業界の民間団体に所属するテーブルマナー講師などは、いわば占い師のようなもので、どうにも胡散くさい。自分の発言を相手に正しいと思わせることで成り立つ商売だからか、無駄に言葉が多く、大事な原則をきちんと伝えていない。また、文部科学省にしても、食の文化的側面に注力しておらず、いまだに多くの日本人が西洋式の食事作法の基本を疎かにするのも頷ける。けれどもヨーロッパで会食中に守られる最低限の作法が、この国・・・
テーブルマナーの中でも、当たり前とされている所作だ。しかし、これが思いのほか日本の社会に浸透していない。伝統的な箸の文化は大切にする一方で、幼少期からナイフとフォークの正しい使い方を、家庭で繰り返し教わった経験がある人は限られるだろうから、残念ながら仕方ないことのように思う。しかし、学問だけではなく教養と知識も得られるはずの学校教育の現場で、多くの人が経験する食事の作法が身につかないのはどうしたことか。指南役の能力不足を疑わざるを得ない。
ホテルやレストラン業界の民間団体に所属するテーブルマナー講師などは、いわば占い師のようなもので、どうにも胡散くさい。自分の発言を相手に正しいと思わせることで成り立つ商売だからか、無駄に言葉が多く、大事な原則をきちんと伝えていない。また、文部科学省にしても、食の文化的側面に注力しておらず、いまだに多くの日本人が西洋式の食事作法の基本を疎かにするのも頷ける。けれどもヨーロッパで会食中に守られる最低限の作法が、この国・・・









