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日本の科学アラカルト 184

重要材料「キラル分子」の可能性 次世代電子デバイスへの応用

2025年12月号

 身の回りに溢れている電気製品の内部では、当然のことながら電流が流れている。電流のオン、オフといった信号でさまざまな動作を行っているのだ。電流を司るのは電子と呼ばれる微小な粒子であることや、その電子がマイナスの電荷を持ち、電池では、負(-)極から正(+)極の方向に電子が移動していることは中学、高校の理科で学習する。
 しかし量子力学の世界では、電子は電荷以外に「スピン」という量も持つ。スピンとは「電子が持つ磁石としての性質」。「電子の角運動量」とも呼ばれるが、実際に回転しているわけではなく、磁石のN極とS極のように向きがある。
 電荷の移動としての電流だけでなく、このスピンの効果もエレクトロニクスで活用する分野を「スピントロニクス」と呼ぶ。
 スピントロニクス自体は新しいものではなく、1980年代に発見された巨大磁気抵抗(GMR)効果にまで遡る。磁性金属と非磁性金属のハイブリッド構造に磁場を加えることで電気抵抗が大きく変化することが判明したのだ。これを応用したセンサーが、ハードディスクの読み取り部品などに実用化されている。
 今回注目するのはスピ・・・