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伊首相メローニはなぜ化けたか

極右封印「長期政権」へ邁進

2026年1月号

 彼女が首相に就いた時、「ファシストがやってきた」と多くが恐れおののいたものである。今、その政権は内外の信頼を集め、欧州で最も安定性が高いと評価される。
 イタリアで、ジョルジャ・メローニ率いる右派極右連立政権が、発足から3年を過ぎて依然好調だ。メローニ自身への支持率は40%を超えており、政治家の浮き沈みが激しく、短命政権ばかりだったこの国では、極めて異例。欧州を見渡しても、ドイツ首相メルツの与党支持率が20%台、フランス大統領マクロンへの支持率に至っては10%台だけに、その人気ぶりが際立つ。
 若いころのメローニが右翼の活動家だったのは事実だ。物心もつかない時期に自由人の父親が出奔し、ローマの母子家庭に育った。幼少時、姉と一緒に用意したろうそくがもとで火事を出し、労働者住宅への引っ越しを余儀なくされた。少女時代は肥満体で、いじめを受けたという。「辛かったが、それは私を鍛え、容易には狙われないよう自らを変えることにつながった」と、彼女は自伝で回想した。
 ディスコで働きつつ職業高校に通い、大学には進まなかった。一方で、ファシスト党の流れをくむ右翼政党「イタ・・・

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