ガザ戦争は今、ひと時の平穏を迎えている。だが、停戦の気配が濃くなればなるほど、その静けさを素直に歓迎できない勢力がある。イランとイスラエルだ。
　宿敵と呼び合う２国でありながら、ある一点で利害が一致する。停戦が固定化し、戦後の枠組みが既成事実として固まることを、どちらも望まない。その結果、両者はガザ停戦を揺さぶり、再び覆す方向へと動いているのだ。
　２０２５年６月、イスラエルと米国の攻撃でイランは壊滅的な打撃を受けた。しかし数カ月が経っても、イランが後退する兆しはない。むしろ表向きは沈黙を保ちつつ、レバノンやイエメンで戦線を再編し、復権の足場を静かに組み直している。
　今のイランにとっての復権は、正面の軍事力だけではなく、勢力圏での接点をできる限り温存することにある。シリアでのネットワークは弱体化し、レバノンのヒズボラは幹部暗殺の連続で、立て直しには時間を要する。だからこそ、勢力圏の再設計は「残存する拠点」を最大限活用する方向に傾く。それは、今回の惨事を引き起こしたハマスの存続も、例外ではない。

アゼル回廊での不穏な動き・・・