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タイ・カンボジア紛争は根深い

アジアにも広がる「戦乱の日常」

2026年1月号

 タイとカンボジアの国境紛争が再燃する中、タイのアヌティン首相が突如、下院(定数500)の解散に踏み切り、2026年2月8日に選挙が行われる公算が大となった。国境紛争を巡っては、両国とも相手側が先制攻撃を仕掛けてきたと非難合戦を繰り広げているが、タイ側の強硬姿勢が目立つ。タイ国内では愛国心がかつてないほど高まっており、アヌティン氏は強い指導者像を演出することで「選挙戦を有利に運べる」と判断したとみられている。
「暫定政府は国家安全保障に関し全権を保持しているため、下院解散はカンボジア国境における軍事作戦に影響を与えない。何も変わらない」
 下院の解散に踏み切ったアヌティン氏は25年12月12日、記者団にそう断言した。タイ国内では前日夜に下院解散が発表されて以降、国民の間で「内政の混乱がカンボジアとの国境紛争に影響を与えるのではないか」との懸念が募っていたが、同氏はそれを一蹴した。
 タイとカンボジアの国境地帯では7月、大規模な軍事衝突が起きた。トランプ米大統領とマレーシアのアンワル首相による仲介で「停戦」にこぎ着け、両国は10月26日に和平合意に調印した。・・・

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