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日本の科学アラカルト 188

被害を抑え込む「台風予測」シミュレーション

2026年3月号

 この冬は、日本海側が広く大雪に見舞われた一方で、太平洋側は降雨量が極端に少なく渇水になり、乾燥によって山火事が頻発した。30年に一度ともいわれる少雨がさらに続けば、暖かくなってからの農業などにも深刻な影響を与える。そんな中、2月に気象庁が発表した速報は、今年はエルニーニョ現象が発生する可能性の方がより高くなる(60%)とした。南米・ペルー沖の赤道付近の海面の水温が平年より高くなるエルニーニョが発生すると、かつては、日本は冷夏になるといわれた。気温上昇により、当てはまらないこともある中で、台風の日本列島への接近や上陸が増えるという傾向も指摘されている。台風やそれにともなう気象現象について、予測しようという研究は日本の科学者の重要な研究テーマのひとつだ。
 台風がいつどこで発生するか、どれくらい強くなるか、いつ強くなるのかという予測は極めて難しい。原因は、気象現象が「複雑系」だからだ。いわゆるバタフライ効果のように、些細な変化が大きな結果の違いに結びつくことがあるため、観測した初期条件のわずかな誤差でも影響は大きい。そして温度や気温、風速などの観測の精度を上げるにも限界がある。・・・