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WORLD

イスラム「解放党」拡大の脅威

米国「対テロ戦争」の新たな障害

2010年1月号

 近年世界各地で急速に警戒されるようになったイスラム過激派の中に「解放党(Hizbut-Tahrir)」の活動がある。
 その勢力は中央アジアを中心として、ユーラシア大陸全体に広がる様相だ。この台頭は、現実的なテロという手段にも移行しつつあり、オバマ大統領が継続する「テロとの戦い」の先行きにも影を落とす。さらには中国をも敵対視しており、「解放党」が持つ過激な傾向やイデオロギーは、世界秩序への新たな脅威として迫っている。
 

中央アジアで浸透


 二〇〇九年十一月、バングラデシュで行われたイスラム過激派対策会議(南アジアにおける過激主義に対抗するための人間安全保障アプローチ)で、同国元空軍将校は「解放党がこの国では最も脅威となっている」と語った。それは、他のどのイスラム過激派組織より社会への浸透の度合いが急速で、根強く、ムスリムの心情を巧みに掌握するようになっているからだという。
 解放党は、一九五三年にヨルダンで、パレスチナ人判事であるタキー・アッディーン・ナブハニ氏・・・