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連載

あるコスモポリタンの憂国 連載37

フィンランドと或る音楽的邂逅
紺野 大介(清華大学招聘教授)

2010年2月号

 フィンランドは「ダボス会議」として知られる世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している国際競争力世界一位の常連の国。また子供の学習到達度指標で知られる国際学力調査(PISA)で世界一位の国でもある。何度か訪問した。特に初回ヘルシンキ空港に降り立った時は真冬であり、冷気が顔に突き刺さり、タクシーに乗った後でも体温が奪われる感じが癒えないままホテルへ。そして内部のサウナへ直行した。
 人間の体温(環境に左右されない核心部体温)は概ね三十六・五℃。手足の先は環境に左右されて三十℃程度。「人間の許容限界事典」によれば、核心部の低温方向は三十℃以下で意識消失し、二十℃前後で心臓からの血液駆出が不能となり死に至る。因みに高温方向は四十二℃以上で十数時間経つと死に至る危険性が高くなり、四十四℃を超えると短時間でも酸素系に不可逆変化が生じ回復不能となる。なのにサウナの温度は概ね九十~百℃であり、入れば即死に近い筈。しかしむしろ快適である。湿度が一〇%前後と極めて低い上、毎分二〇~四〇?に及ぶ大量の汗が、半導体ではないが皮膚表面に薄膜を作り、その保護フィルムが皮膚を乾燥から守る。汗が乾燥空・・・