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インド洋上波高し

米中印の「争覇の場」に

2010年3月号特別リポート

 インド洋の波はますます高しと言っていいと思う。ハワイ以東を米国が、以西を中国が支配し、米中がすべての情報を共有すれば太平洋に問題はなくなると豪語した中国海軍の幹部が、インド洋を中国が支配するとまで言い出しているのだ。実際に中国はミャンマー、スリランカ、パキスタンなど友好国の港湾建設を支援する名目で中国海軍の拠点を着々と建設しつつある。
 歴史的な対立を続けてきた中国とインドは努めて友好関係を演出し、軍事面でも信頼醸成措置を作りだしつつあるかのように装ってはいるが、インドは中国よりも一足先に空母一隻を保有し、原子力潜水艦の増強に全力を挙げ、中国を除外したインド洋関係諸国間の連帯感を強めつつある。ソマリアの海賊対策を絶好の口実にインド洋にいち早く艦隊を派遣した中国の海洋戦略の狙いがいかなるものかをインドの戦略家たちは知りつくしている。
 東西冷戦時にはイギリス領ディエゴ・ガルシア島に大海軍基地を構築してインド洋の制海権を握った米国は、アフガニスタン、パキスタン、イエメン、ソマリアと拡大傾向にある戦線の縮小期に入っている。
 中印両国が緊張関係を迎えたときに、・・・