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中国のゲオポリティーク

国際秩序を変える地政学的大戦略

2010年6月号特別リポート

 葦の髄から天井を覗いている、と言わざるを得ない。中国には貧富の差が大きくなる一方で、農民の不満が鬱積している。開発の犠牲になった人々の抗議デモや暴動が頻発している。物質主義に走った人々は愛国心を失ってしまった。党や政府幹部の間には汚職が蔓延し、当局はこれをコントロールできない状態に陥っている―など、あたかも中国が崩壊に向かって坂を転げ落ちていくかのような説が罷り通っているようだ。希望的観測を活字にするなどは論外だが、軍、警察、公安を一手に握った中国共産党が簡単に潰れるとは考えにくい。
 日本以外の国々では、「台頭する中国」を改めて地政学的見地から分析する試みがなされつつある。最新の例は、米ジャーナリストでニュー・アメリカン・セキュリティー研究所のロバート・カプラン上級研究員がフォーリン・アフェアーズ誌五~六月号の巻頭に書いた「中国の巨大地図―北京は陸と海でどれだけ勢力を拡大するだろうか」であろう。地理、歴史、政治、軍事、経済などを総合して、中国は北でロシア極東部に入り込み、中央アジアからは石油や天然ガスをパイプラインで新疆ウイグル自治区に導入し、チベットに弾圧を加え、・・・