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連載

あるコスモポリタンの憂国 連載41

名門コーネルの景観
紺野 大介(清華大学招聘教授)

2010年6月号

 昨年初夏、或るご縁で台湾の台北市内ホテルで馬英九台湾総統とお会いした。周知の通り就任式における対中国政策として、任期内の「不統、不独、不武」(統一せず、独立せず、武力行使せず)の三不宣言をした御仁である。名門ハーバードの法学博士号を持ち聡明感の漂うスマートなイメージ。円形テーブルの筆者の左隣には総統の政策担当の主席秘書官。彼も米国バージニア大学留学組だそうで、主題後の雑談で米国の大学キャンパスの美しさについて話題がでた。
 彼によれば「コーネル、プリンストン、バージニア大学の順」といったものである。バージニアは州立なので、言葉通りであれば全米州立大学中ナンバー1の美しさなのであろう。また西海岸の名門スタンフォードでMBAを取得した古い友人によれば、景観ランク「第一位コーネル、第二位プリンストン、第三と第四位は知らないが第五位スタンフォード」と口癖のように言っていた。キャンパスの美観にランキングをつけるといった趣味にはついていけないが、米国はこうした統計が好きである。コーネルもプリンストンも全米というより世界屈指の名門大学。美観のほか当然ながら学問的な名声、科学的、技術的な出・・・