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短期連載 「幻想の経済大国」中国(下)

農民の本格的造反が始まった

2010年7月号

 中国経済の混乱は坂道を転げるように加速し始めた。この短期連載を始めた二カ月前には、煙すらみえなかった工場労働者の賃金引き上げ、待遇改善を求めるストライキは今、深祁、上海、天津など沿海部から西安、重慶など内陸にまで燃え広がり、飲食店チェーンなどサービス産業にまで拡大している。中国で賃上げストは決して珍しくはないが、今回のように全国で同時進行するケースはかつてない。この状況に最も似ているのは民主化を求める市民、学生と軍が衝突した一九八九年六月四日の天安門事件、正確に言えば第二次天安門事件(第一次は一九七六年四月、亡くなった周恩来首相への献花撤去をめぐって起きた)である。民主化を求めるデモは全国の主要都市に波及、上海市トップとして市内の民主化運動をうまく鎮圧した実績を認められた江沢民は一気に総書記に上った。
 今、なぜ工場労働者が賃上げなどを要求して騒ぎ始めたのか?
 本連載でこれまで紹介した通り、中国は共産党員とそれに連なる人々だけが豊かになる差別構造で急成長してきたからだ。共産党員を金持ちにするためにムダな公共事業を全国で展開し、党内での出世のために地方幹部が・・・