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ひと荒れ必至のエジプト情勢

大統領候補エルバラダイ登場の背景

2010年8月号

 ムバラク大統領(八十二歳)の健康不安説が再燃し、エジプト政府はその否定に全力を挙げている。また大統領も、積極的に外国要人と会見し、演説をTV放映することで、懸念払拭に努めている。
 それでも、病人然とした高齢大統領の立ち居振る舞いを見れば、「根拠のない噂」(政府報道官)がつきまとうのは無理もないことだ。最近では、七月中旬のネタニヤフ首相との会談予定を二度にわたって延期した。結局会談は実現したものの、健康上の理由しか考えられない突然の延期だった。
 大統領は三月に独・ハイデルベルクで胆のう除去手術を受けた。術後は順調とされているが、カイロの大統領官邸には戻らず、シナイ半島のリゾート、シャルム・エル・シェイクで静養を続けている。
 アラブ世界では、国王であれ、大統領であれ、およそ国家元首たるもの、その任期は「終身」である。この特異な現象を理解するには精緻な議論が必要だが、ここでは、「大統領は暗殺されるか、自然死するまでは権力の座を手放すことはない」という不文律を再確認するに留める。
 ムバラク大統領が、多少なりとも健康状態に自信を持てる状況に・・・