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経済

今は昔「造船大国」ニッポンの「惨憺」

世界シェアは五%を割った

2010年8月号

 港町神戸の顔は、かつて外国航路の客船などが着いたメリケン波止場やポートタワーだけではない。大型の門型クレーンが忙しく動き回る造船所群もまた神戸港を象徴する。
 神戸の造船所を代表する三菱重工業神戸造船所が商船建造から撤退することが決まった。三菱重工には“旗艦”の長崎造船所と修繕・改修が主の下関造船所があり、造船会社としての姿は変わらない。だが、神戸から川崎造船に続き、三菱重工の商船建造がなくなれば、造船ニッポンの衰退は一段とあきらかになる。

韓国・中国との差は開く一方


「三菱の神戸」といえば世界の海運関係者にはその名が鳴り響いた造船所のひとつだ。その名を知らしめたのは一九九〇年代の台湾のエバーグリーン(長栄)海運向けの大型コンテナ船の連続建造だ。九四年三月の引き渡しから二〇〇三年一月まで延べ三十八隻の大型コンテナ船をエバーグリーンに引き渡した。船会社と造船会社の間の契約としては空前絶後の規模だったのに加え、何の狂いもなく予定通り三十八隻を連続で納入したモノづく・・・