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社会・文化

「借金地獄」に苦しむ癌研究会

先端医療を崩壊させる銀行の強欲

2010年8月号

「癌研」の略称で知られる財団法人癌研究会が、危機に直面している。借金苦に喘いでいるのだ。二〇〇五年の新病院建設の際、杜撰な返済計画に基づいて三百億円以上が貸し込まれた。貸し手の銀行シンジケートは、有無を言わせぬ苛烈な取り立てで追い込んでいる。
 癌研の「守護者」といえば、周知の通り、東京ガスだ。この会社は、癌研の主要ポストで指定席を確保しながら、この苦境に際して救いの手を差し伸べようとしない。無理な返済計画を練り、揚げ句、財団の会計で粉飾決算までしでかしたのが、ほかならぬ東京ガス出身の事務局長だというのに、だ。
 癌研の公共性など一顧だにしない銀行団に生き血を吸われ、頼みの財界は事態に頬かむり。日本のがん医療を支える、皇室ゆかりの病院は看取る者なき瀕死の床に伏せっている。

「がん治療研究は不採算事業」


 癌研は一九〇八年、日本初のがん専門研究機関として設立された。
「がん克服をもって人類の福祉に貢献する」
 この基本理念の下、渋沢栄一や桂太郎らが設立にあた・・・