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経済

食糧市場に狙い定めた「暴走マネー」

価格「操作」する輸出国とファンド

2010年9月号

 リーマン・ショックやユーロ危機の元凶である暴走マネーが今度は、食糧市場に向かっている。今年は世界的な異常気象の中、ロシアが穀物輸出禁止を発表したこともあって、穀物価格は急騰しているが、価格上昇は自然現象のせいだ、などと暢気に考えてはならない。暴走マネーは過去数年で従来の規制メカニズムを骨抜きにしており、世界は「食糧の金融化」と「食糧価格の高止まり」という困難な事態に直面している。

値上がり狙ったロシアのブラフ


 食糧市場でのマネー暴走を示す事件が、今年七月に起こった。
 英国のファンドマネージャー、アンソニー・ウォード氏率いるヘッジファンドが、二十四万トンのカカオ豆を現物で購入したのだ。
「現在の食糧関連の取引は、九八%までが現物を伴わない。現物購入は極めて異常な事態」と消息筋は言う。総量は全世界のカカオ豆年間生産量の七%にのぼり、チョコレート五十億個分。ロンドンの倉庫はカカオ豆であふれるだろう。
 これは、値上がり目当ての買い占めという古典的投機だ。カカオ豆は今・・・