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イスラエルが「産ガス国」の衝撃

資産価値「六兆ドル」を手にする

2010年10月号

 八月の新聞紙上に、ごく小さな記事が掲載された。レバノンが「エネルギー法」を制定したというものである。中東諸国の一員とはいえレバノンは天然資源のほとんどない国。この唐突ともいえる政策の背景には、イスラエルからレバノンに至る地中海で見つかった巨大なガス田構造を巡り、イスラエルが一方的に一大エネルギー輸出国へと変貌する事態へのレバノン当局の強烈な危機感がある。
 思わぬ「宝」の発見に心中穏やかでないのはイスラム教原理主義組織ヒズボラも同じだ。ユダヤ教徒の国における天然資源の発見は、「石油と天然ガスはアラーの神がイスラム教徒にのみ与えた恵み」と教えられてきたイスラム教徒の誇りを大きく揺るがした。
 さらにイスラエルが産ガス国になることは中東やロシアを含めた世界のエネルギー地図を一変させ、ユダヤ資本を新たな「ガスマネー」で一層太らせることにもつながる。このため、欧州の一部保守層の間でも、金融分野に加えてエネルギーについてもユダヤに牛耳られかねないといった生理的な反発すら生じ始めている。

「サハリン」の十倍の埋蔵量

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