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社会・文化

魚食文化担う「養殖」の今後

進歩し続ける技術

2010年10月号

 十月十一日から約三週間の日程で「生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)」が、名古屋市を会場として開催される。このなかでは、世界的な過剰漁獲が指摘されているクロマグロ資源などについて議論が予定されている。さらに、検討されている決議案には「陸地、海洋面積の少なくとも一五%を保護する」という文言がある。しかも、欧州などは二〇%を主張しており、この数字がどこで決着するかは不透明だ。どちらにせよ今後、生態系に直接手を入れる漁獲漁業への風当たりは強まりこそすれ、弱まることはない。
 そして、世界中での漁獲規制に加え、豊漁が続いていた近海のサンマさえも不漁に見舞われるなど、天然水産物供給の先行きは極めて不透明だ。こうした中、技術の改良や先端技術の導入が進んでいる、養殖魚の未来に期待が集まる。

「人間並み」の健康管理


 近年、養殖でしか実現できない高度な研究も進んでいる。
 たとえば、「水銀フリー」のマグロだ。養殖魚研究でこの国の最先端を走る近畿大学で、安藤正史教授は大型魚の身に高い・・・