三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

米金融政策に新興国は「怒り心頭」

いよいよ「窮地」のオバマ外交

2010年12月号

 アメリカの金融政策が、新興国と深刻な摩擦を起こしている。米中の「通貨戦争」のあおりで、バブル懸念が膨らむ中、連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の第二弾(QE2)を放ったためだ。特に、ブラジル、南アフリカ、トルコなど、オバマ外交のカギを握る国々が一斉に反発しており、米国の外交政策は一層厳しくなった。
 十一月のG20のソウル・サミットは、オバマ大統領にとって四度目だ。就任直前のワシントン・サミットを含め、G20首脳会議は二年で五回開催されたわけで、危機の深刻さと主要国の抱いた切迫感を反映する。
 ところが、この馴染みの舞台が、中間選挙敗北の傷も癒えないオバマ大統領にとって悪夢の会議になってしまった。
 原因は、サミットの直前に発表されたQE2。二〇一一年六月末までに六千億ドル(約五十兆円)もの米国債を買い上げるというものだ。「ドルを印刷して、市場にばらまくだけ」(中国筋)の金融政策で、通貨安競争の新たな武器だ。
 米国批判の先頭を切ったのは、世界の二大輸出国である中国とドイツ。だが、中国以外の新興国も辛辣な批判を浴びせ、オバマ政権を驚かせた。・・・