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連載

本に遇う 連載134

順番を待ちながら
河谷史夫

2011年2月号

 昔は立派な風貌の老人がいた。若いころ、そういう人に接すると、当方にはおよそ縁なき悟りの境地に達しているに違いない、と信じて疑わなかったものである。
 いざ自分が年を取ってくると、何たることか相も変わらぬ阿呆面に加えて未熟なままの心根の様に、我ながら恐縮するほかない。
 年齢というものについてはあんまり意識過剰にならぬように参ろうよ、というようなことを年明けの「読売」で編集手帳子が述べていたが、年齢といえば四十歳というあたりが節目だろう。
 孔子に有名な言がある。
「吾れ十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順がう。七十にして心の欲する所に従って、矩を踰えず」
 四十歳は本来「初老」だ。人生八十年の半分は老いの坂である。
 兼好法師も四十歳にこだわった。
「命長ければ辱多し。長くとも、四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」
 長命すると、名誉や利益をむやみに貪り欲しがり、実にあさましいとにべもない。もっともご本人は四十、五十どころか七十歳を越え・・・