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WORLD

それでもエジプトは変わらない

軍にしがみつく既得権組

2011年3月号

 盤石の基盤を有していると思われたムバラク大統領は、わずか二週間の民衆蜂起の圧力に屈して辞任した。突然、予想をはるかに超える巨大デモが起きたのは、チュニジアのベンアリ大統領があっけなく「逃亡」したことに原因があった。このニュースを知り、やればできると自信をつけた若者らが一月二十五日「警察の日」の決起をフェイスブックで呼びかけた。これがすさまじい動員力を発揮したのには、衛星テレビ「アルジャジーラ」の強烈な扇動も大きな役割を果たした。
 二人の元大統領はサダム・フセイン型の独裁者ではなかったが、共通しているのは、言論の自由を著しく制限し報道を統制する一方で長期にわたり政権に居座り、自ら腐敗・汚職の先頭に立っていたことである。
「革命」は、一夜にして英雄を犯罪者に変える。「ムバラクの一味」であると判定されることが死を意味するに至り、エジプト政府系紙の幹部らは露骨な変わり身を見せた。「国民の意思が体制を倒した」と、かつてのご主人様を見捨て、新しい主人である「国民」になりふり構わず擦り寄っている。
 そのひとつ「アルアハラム」紙が伝えたロイター記事によれば、旧・・・