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経済

製造業全体が崩壊の瀬戸際

福島原発事故と日本経済

2011年4月号

 ネオンサインが消えた繁華街、照明を落とした高層ビル群、なかなか来ない電車、陳列棚がからっぽの薄暗いスーパーマーケット―。冷戦構造末期の一九八〇年代末のモスクワやプラハを思わせる光景が、三月十一日以降の首都圏に広がった。先進国、ニッポンは大震災で思わぬ弱みを世界にさらけ出した。
 東北・関東を襲った今回の大地震の死者は三万人を超えるとみられる。岩手県と宮城県は県民の二%近くを失った可能性がある。その犠牲者の大半は大津波によるもので、過去に何回も津波の被害を受けながら町の移転など抜本的な対策をとらなかった日本および日本人の、リスクから目をそらす性向が悲劇的な形で表れた。
 東京電力の福島第一原子力発電所の危機も似た構造を持つ。冷却できなければ原子炉や使用済み核燃料プールが危機に陥ることは、原子力技術者であれば誰でも知っていた。しかし、自衛隊や米軍に支援を求めることには躊躇し、自分たちでできる日常的な対策でなんとか乗り切ろうとした。結果は、すべてが後手に回り、危機を増幅させた。東電だけでなく、日本企業の多くが共通して持つ「ダチョウ症候群(危険が近づくと、頭を砂に突・・・