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連載

西風 359

阪神大震災の教訓は生きた
八木亜夫

2011年4月号

 


 東日本大震災の、ないないづくしの避難所からの悲鳴が報道されると、だれしもが「がんばれ」と声をあげたくなった。その中で、十六年前の阪神・淡路大震災を体験した人は「がんばれ」につづいて「まもなくなんとかなるから」と言いたくなった。あのときも、最初は絶望しかなかった。火が迫っているのに助け出せず、親や子がむざむざ焼け死んでゆく地獄を見た人たちが、かろうじて避難所にたどりついてみれば、そこは、足りないものだらけだった。だが、そのどん底から、人々はなんとか立ち上がったのだ。
 もちろん、何もかもがうまくいっているわけではないが、十六年前にくらべれば、災害救援の手法は、はるかに進歩している。あのときは「ボランティア元年」などといわれ、すべてを一から始めなくてはならなかった。だれもが被災地を助けるのに何をしていいのかわからず、身の回りの不用品を箱に詰め、てんでに送りこんだために、現地にはそれが山のように積み上がり、その仕分けに手をさかれた。現地からの要請がないために自衛隊の出動は遅れ、政府は在日米軍の協力を断り、周辺自治体との相互救援体制は、・・・