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「反米」に傾くパキスタン

米軍アフガン撤退に「暗雲」

2011年5月号

 アフガン情勢の鍵を握るパキスタンが、米国との関係を著しく悪化させている。これまで、脆弱な経済基盤などから米国の支援を必要とし、二〇〇一年以降の「対テロ戦」でも米国に協力してきたパキスタンだが、外交・防衛政策を掌握する軍、特にその中枢にある情報機関「三軍統合情報部」(ISI)が、対米追従拒否の姿勢を明確にしたためだ。
 オバマ政権は、今年七月にアフガンからの米軍部隊撤退を開始し、一四年までに完全撤退を目指している。だが、いまや「アフガン問題の主戦場」となったパキスタンで、パキスタン軍が反米的な独自の動きを取るようになってきた。地域の治安悪化が収拾不可能となり、撤退計画も破綻する公算が強まっている。
 米国との亀裂を決定的にしたのは一月二十七日、パンジャブ州ラホールで、米総領事館員のレイモンド・デイビス氏が現地の若者二人を射殺し、殺人容疑で逮捕された事件だ。同容疑者がCIAの契約職員だったことが判明し、「死刑」を求める声が広がった。CIAは、武装勢力掃討目的で、無人偵察機をアフガン側からパキスタン北西部に飛ばして空爆を繰り返し、多数の民間人の犠牲者を出してきた。・・・