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連載

続・不養生のすすめ6

「老化防止」の虚と実(2)
柴田 博

2011年6月号

 老化の行き着いた先には、死が待っている。死は拒否できない。できるとすれば、老化を遅らせることだけだ。それにも限界がある。老いと死は受け入れるしかないのだが、人間、なかなかそう簡単に割り切れるものではない。
 老化については、対立する二つの考え方がある。
 一つは、老いによって衰えたり、喪失することを肯定的にとらえ、そこから新たに生まれる発達や円熟を目指す考え。これは「老年学」の土台である。
 もう一つは、老化そのものを否定する考え。「アンチエイジング」とか「エイジフリー」とか呼ばれるものだ。加齢による人体機能の低下を阻止し、なんとなれば臓器を取り換える、歯はインプラント、顔相は美容整形手術で衰えを隠す。成人の頃までに完成された自分を、極力崩さず、崩れそうになったらその部分を取り換えていこうとする考え方だ。
 アメリカなどでは、この二つの考え方は激しく対立しあっている。が、日本では、なぜかどうも曖昧なままだ。
 アンチエイジングには商業的な側面が強く、これでひと稼ぎを目論む企業などが群がる。医療や医薬、健康食品など、アンチエイジングに連・・・