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経済

世界「同時株暴落」の危機

米財政問題の混迷で広がる病巣

2011年12月号

「いま世界中の投資家が、先行きへの不安から、本能的にリスクレス投資に向かっているのさ。だから米十年物国債の利回りがまた二%を切っただろう?」  十一月二十一日、米国の財政赤字削減のための超党派による特別委員会の協議が決裂したことを受け、NYダウ平均が一時三百ドルを超える大幅下落に見舞われても、この米系ヘッジファンドの運用担当者はまったく動じなかった。 「数字で説明しようか。昨年十二月末の外国銀行からの米FRB(連邦準備制度理事会)への預金は三千五百億ドルだった。それが最近では七千百五十億ドル、二倍以上に増えているんだ。この分が米国国債の購入に回る。ここさえ大丈夫なら、ほかはどんなことが起きたってOKなのさ」  世界中の株価が下がり、日本株も年初来の安値を更新したというのに、まるで「俺たちの作戦がうまくいっている」と言わんばかりの自信だ。  リスク資産はすべて売られ、逆にヘッジファンドや米系投資銀行のアドバイスに従って「米国国債保有こそリスク回避」と米国国債買いに走る、市場はいわば思考停止のような状況にある。  もちろんこの前途への不安の中心が欧州の債務危機・・・