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社会・文化

「五千万円マグロ騒動」の舞台裏

仕組んだのはテレビ局

2012年2月号

「損をして売っているというが、あれだけテレビで宣伝してもらえれば、儲けてるじゃねぇか……」  一月六日、東京都中央区の築地場外市場にある「喜代村」の店頭で、四十代くらいの男性と店員が、巨大なマグロの頭を挟んで対峙していた。このマグロこそ、五日の初競りで五千六百四十九万円という史上最高値で落札された青森県大間産のクロマグロだ。喜代村の店員は困ったような顔をするばかり。

あからさまな売名行為

 この現場を目撃した、築地で長年仲卸を経営していた野末誠氏は、今回の騒動への違和感を、面と向かってぶつける男性に感心した。 「近年の初荷最高値競争は異常。築地市場が担うべき仲卸の正当な評価機能が疑われてしまう」  野末氏はこう批判する。 「初荷マグロ」の値段高騰が大ニュースになったのは二〇〇一年だ。この年は、それまでキロ四万五千円程度だった最高値を一気に更新し、キロ十万円をつけた。重量は二百二キロあり、それまで九百万円程度だった記録の二倍以上、一本二千二十万円となった。  様相が変わったのは〇八年からだ。この年、六百七万円の最高値で大間産マグロを・・・