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連載

本に遇う 連載149

「茹でられ蛙」の運命
河谷史夫

2012年5月号

 民主党政権がもたついている。旧帝国陸海軍の末期に似て、断末魔のうめきが聞こえるようだ。

 旧陸海軍をだめにしたのが陸軍士官学校から陸軍大学校を出たのや海軍兵学校から海軍大学校を出た「職業軍人」であったならば、政権交代の期待を哀れにもことごとく裏切ったのは、弁護士上がり、松下政経塾上がり、市民運動家上がりに駅前弁士上がりといった「上がり政治家」のせいである。そうそう、忘れてはいけない。イランことをすぐ口にする、お金持ちのお坊ちゃん上がりというのもいた。

 こんなことは具眼の士には先刻承知のことであって、「弁護士による政治」の限界をいちはやく指摘したのは、毎日新聞の伊藤智永であった。この記者、どういうわけか「辺境」のジュネーブあたりにいて、ときどき思い出したように「発信箱」なる欄に送ってくる。こんにち新聞に溢れかえるコラムのなかで、わざわざ探してまで読みたくなるのは、日本経済新聞運動欄の豊田泰光「チェンジアップ」と伊藤の「発信箱」を双璧とする。読まずにいると何だか損をした気になるのである。

 伊藤はつとに「弁護士だらけ」の・・・