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「中国沿岸警備隊」の実態

各省庁が持つ五つの「準兵力」

2012年6月号

 五月十五・十六の両日、中国・浙江省杭州市で初めての日中海洋協議が開かれた。 「今回は、中国の海上法執行機関が顔を揃えたことが収穫」  中国の軍事情報に明るい、日本の防衛専門家はこう語る。日本で海上の法執行機関と呼べるのは、海上自衛隊と海上保安庁だ。 「中国は、海上保安庁に当たる機関が林立し、棲み分けさえ曖昧」  前出専門家はこう指摘する。

海軍軽視が生んだ「五匹の龍」

 今回集まった中国側の法執行機関は、公安部に所属する公安辺海警総隊(海警)、交通運輸部海事局(海巡)、農業部漁政局(漁政)、国土資源部国家海洋局海監総隊(海監)、税関総局(海関)だ。  これらを総称して「五龍(五匹の龍)」と呼び、それぞれ独立した「準兵力」と呼ぶべき部隊を保有している。最近まで、この五機関の実態について明らかにされてこなかった。近年の中国による海洋権益拡大の動きに合わせて注目されるようになり、日本側もカウンター・パートとなる部門へのアプローチを行ってきた。公安部の海警が保有する船体には「China Coast Guard」と書かれており、一・・・