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政治

誰もが「無罪放免」の原発事故調報告

「ウヤムヤ」に終わった責任追及

2012年8月号

「菅直人首相は、何の躊躇もなく『(東電の)撤退はありえない』と言った。私は(彼が)日本を救ったと今でも思っている」  細野豪志原発事故担当相は昨年十一月、東京電力福島第一原子力発電所事故に関する「民間事故調」のヒアリングに対し、こんな証言をしていた。東電が原発を放棄して全面撤退しようとするのを、菅氏が東電本店に乗りこんで体を張って止めたという、いわゆる「菅英雄説」の開陳だ。  細野氏をはじめ枝野幸男官房長官(現経済産業相)、寺田学首相補佐官ら当時の官邸首脳らは事故直後の昨年三月半ばから、盛んにこうした撤退阻止論をメディアに吹聴していた。  だが、「民間」「東電」「国会」「政府」の四つの事故調査委員会の最終報告が出そろった今となっても、細野氏は堂々と同じことが言えるだろうか。東電に全面撤退の意思も計画もなかったことは、すでに評価がほぼ定まった。  東電側から聴取できず、官邸側の主張に引きずられた民間事故調を除く三つの事故調はすべて、全面撤退は「官邸側の誤解」だと認定しているのである。  もちろん、東電側の不明瞭な説明も一因だし、東電側に問題点が多いのは言うまでも・・・