三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

日本の科学アラカルト24

デジタル時代の「紙」 記憶媒体の技術革新が進む

2012年8月号

 太古の文化を知るための手段は数多あるが、最も直接的なものは当時の文献にあたることだ。エジプトのロゼッタストーンのように、記録が残りさえすれば、仮に解読に時間がかかったとしても、後世に伝えることが可能である。

 最近の事例でいえば、二万年先まで放射線を出し続ける高レベル放射性廃棄物について、その遠い将来の人類に、いかにしてその危険性を伝えていくかということが話題となった。仮に二万年先に人類が存在したとしても、文明の連続性が担保されなかった場合、いかにして警鐘を鳴らすかという問題は切実である。

 核廃棄物の危険性というセンシティブな問題だけではない。現在溢れ返る、文章や映像といったものを将来に残すために、我々は否応なく電子記憶媒体(メモリー)に頼らざるを得ない。個々のパソコンや携帯電話、インターネット空間に溢れ返るデータは、メモリーに記録するしか手段がないからだ。しかし、我々が現在使用している媒体は様々な課題を抱えている。デジタル社会に生き、後世に成果を残す上で必要不可欠なメモリー研究で、我が国には先頭グループを走る科学者が多くいる。
・・・