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連載

不運の名選手たち34

前田勝宏(野球選手)愚直すぎた「一六〇キロ」投手 
中村計

2012年10月号

 生意気なヤツ。

 今でも、まったく自分のことを知らない人間に、面と向かってそう言われることがある。

「黙ってますよ、今は。心の中では、ブチ切れてますけど。俺のこと、何知ってんねん、って」

 日本人投手として初めて時速一六〇キロの壁を破った前田勝宏は、その「真っ直ぐさ」ゆえ、これまで何度となく周りと衝突してきた。

 神戸弘陵学園高校時代の恩師、石原康司氏は、「昔は、プロレスラーみたいでしたもんね」と笑う。

 現役時代の前田は、身長百八十八センチで、体重は百キロ超。しかも一時期、髪を金に染めていた。

「根は、すごく真面目で、優しい男。ただ、一本気で、熱すぎるから、誤解も受けやすいんです」

 前田のイメージを決定づけたのは西武入団三年目、一九九五年オフの「退団騒動」だった。水面下でニューヨーク・ヤンキースからオファーを受けていた前田は、西武との契約更改を拒否したのだ。

 西武は当然、認めなかった。高い契約金を払って獲・・・