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社会・文化

京都は「科学者」を育む街

池内 了(総合研究大学院大学理事)

2012年11月号

 ―京都大学がノーベル賞と縁深いのはなぜですか。
 池内
 今回受賞した山中伸弥教授は、厳密には神戸大学卒業で、業績自体も奈良先端科学技術大学時代のもの。しかし、最終的に京大で受賞したのは、街が持つ因果のようなものだろう。京都は古都であり、よそ者を警戒し時に追い出す排他的な文化を持つ一方で、「田舎」から出て来た学生や、大学での研究者を温かく見守ってくれる。祇園のお茶屋で湯川秀樹先生が舞妓に囲まれたという有名なエピソードが象徴的。「学者料金」で遊べたという。

 ――他の街では違いますか。
 池内
 近いところでいえば大阪は商業都市であり、大学の研究開発でも「儲かるもの・売れるもの」を求める土壌がある。名古屋は「モノづくり」の街で、堅実な成果を期待される。両者は決して否定されるものではないが、飛躍した発想はなかなか出にくい。そういう意味で京都の人は、大学・研究者に対して「えらいことしてはるんやなぁ」と一種畏敬の念を抱きつつ、見返りを求めるわけではない。役に立つ研究はもちろん、ノーベル賞を獲るような画期的研究も自由にやらせてく・・・