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経済

楽天のアジア事業が「連戦連敗」

いよいよ「凋落」の始まりか

2012年12月号

 十一月十三日午後四時すぎ、タイ・バンコクの中心部にあるVIP用シアターホールの演台に立った楽天の三木谷浩史会長兼社長の表情はことのほか得意げに見えた。自分のスピーチに酔いしれているのか。口を突いて出てくるのは、もちろん自慢の英語。長々と四十分間にわたって喋り続ける様は、まさに悦に入っていると呼ぶにふさわしかった。楽天の東南アジア進出の橋頭堡と位置づけた重要な事業が窮地に陥っていることなど微塵も感じさせない演出は、見事の一言に尽きた。  この日、楽天のタイ事業法人「楽天タイランド」では優良加盟店の「表彰式」が行われていた。表彰式とは聞こえは良いが、簡単に言えば売り上げ上位の加盟店企業を褒めちぎり、出来の悪い落第企業に喝を入れること。WEB上に仮想モール(商店街)を貸し出す楽天の商法は、店子の売り上げが上がるほど“寺銭”が多く入る仕組みだが、「優良」な加盟店を表彰して競わせるのは多くの加盟店ビジネスが採る常套手段だ。だがこの日、シアターホールの壇上に立ったのは、昨年と何ら変わらない同じ顔ぶれの加盟店事業者たち。一方、対面する観客席には白けムードの落第組の面々―、進出わずか三年にして・・・