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正体現した「ムスリム同胞団」

中東はさらなる「大混乱」の年に

2013年1月号

 二〇一二年の年末、エジプトのモルシ大統領は独裁色の極めて濃い「憲法宣言」を出して反対派の動きを封じた上で、イスラムの御旗を掲げた。イスラム法がより大胆に導入されるとさえ言えば、純朴愚鈍な一般大衆は皆賛成するだろうと、新憲法草案の国民投票での審査を強行したのである。  このプロセスを舞台裏で取り仕切っていたのはもちろんムスリム同胞団だ。またこの団体と基本的な方向性を共有するサラフィー主義者などのイスラム過激主義者もその仲間である。彼らの宗教的独裁を許しては、サウジアラビアやイランのような国になってしまうことは確実だ。危機感を感じた世俗派・リベラル主義者は大規模デモを組織し、中には大統領支持派と街中で衝突したり、同胞団事務所を焼き討ちしたりと、社会不安が高まった。  そのような中、SNSを通じて穏健な意見表明をする賢者も多かった。そんな彼らのスローガンのひとつに、「我は同胞団のメンバーに非ず。ひとりのイスラム教徒なり」というものがある。  この標語のどこが面白かろう、と思われるかもしれないが、それは次の事実の裏返しだ。すなわち、イスラムへの帰依が社会の約束事となっている・・・