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連載

続・不養生のすすめ25

仕事は生きがいであるべきか否か
柴田 博

2013年1月号

一九八〇年代に入るまで、高齢者が社会の中で一定の役割を果たすという考えは、ほとんど存在しなかった。個々の学者にはそういう発想があっても形を成していなかったという方が正確であろうか。しかし、一九八三年、ザルツブルクで開かれた国際セミナーで、高齢者のプロダクティビティという概念が生まれたのである。この国際セミナーには、世界中の名だたる老年学者が集まっていたが、この概念が生まれたのは、アメリカのロバート・バトラー博士の強力な主張のおかげである。バトラー博士は、アメリカ国立老化研究所の初代所長の職を退き、当時は、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学の教授を務めていた。

 このプロダクティビティという用語は、老年学の世界では、幅広い意味をもっている。有償労働も無償労働もふくんでいるのである。無償労働には、家庭菜園をつくることも家事労働も、またボランティア・奉仕活動もふくまれている(表)。この用語の正式な日本語訳は存在しない。筆者は、社会参加一般と区別するために社会貢献という訳語をあてているが、本稿でもそうさせていただく。

 実は、この社会貢献の考え方・・・