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社会・文化

料理の最先端「noma」のレベル

北欧の「いのち」を食す

2013年2月号

 そのレストランでは初めて見ることの連続で、出端から驚かされる。入り口で出迎えてくれた女性がテーブルに近づいてきてコースの説明を始めた。最初に「突き出し(アミューズ)」が出るが、それが十五皿に上るという。  すると女性は、やおらテーブル隅に置いてあった花瓶を中央に寄せると、そこにさしてある茶色の小枝を指差して、これが一皿目だと告げて立ち去った。手でつまんで食べると、パンを小枝に見立てて揚げてある。イタリアのグリッシーニの感覚である。こうしたアミューズが、四十五分かけて次々と運ばれてくるのだ。

年で「予約困難店」に

 いま、世界で最も予約の取れないこのレストランは、パリでもニューヨークでもなくデンマークの首都コペンハーゲンにある。名前はnoma。「nordic(北欧の)」と、食材を意味する「mad」を合わせている。北欧の食材をテーマにしており、地元出身のシェフ、レネ・レゼッピはまだ三十五歳という若さだ。  十代半ばで料理人を志し、スペインの「エル・ブリ」へ入り、当時の世界最先端の潮流を目の当たりにした。その後フランスの三ツ星店や、米国カ・・・