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社会・文化

ソメイヨシノの愉しみ「異聞」

「何年寿命説」に根拠なし

2013年4月号

 三月上旬の異常な気温上昇によって、史上最速といわれるペースで桜前線が北上している。  一口に桜といってもその種類は多岐にわたるが、全国にもっとも普及しているのがソメイヨシノだ。葉に先駆けて花が一気に咲き、散り際も一斉に訪れる。この花がなぜ日本人の琴線に触れるかについては古今、さまざまな検証が加えられており、ここでは触れない。  これまでと違ったソメイヨシノの見方はないか。  この花には様々な俗説がついてまわるが、巷間語られるこうした話には「誤解」が多い。そもそも、ソメイヨシノの起原にも諸説ある。主流である、現在の東京都豊島区駒込にあった染井村で人工的に作出されたという話も有力説に過ぎない。

「桜切るバカ」は俗説

「ソメイヨシノはクローン」。全国の木は、そもそも元となる一本から接ぎ木によって増やしたものであり、すべてが同じ遺伝子を持つという話だ。  気象庁が開花宣言をするための「標本木」がある。東京の標本木は靖国神社にあることが知られているが、静岡の標本木は静岡地方気象台の敷地内にある。この静岡の標本木が今年から別の木に代・・・