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社会・文化

尊厳死の議論を深めよう

土屋了介 (公益財団法人がん研究会 理事)

2013年6月号

日本が今後向き合わなくてはならない尊厳死・安楽死とはなんですか。
 土屋
 安楽死は、大きく二つに分けられる。ひとつは本人の意思を受けて、医師が積極的手段、具体的には薬物の投与などによって死に至らしめること。積極的安楽死と呼ばれ、欧州の数カ国、米国の一部の州で実施されているものだ。もう一つは現在行われている治療を中止することで「結果として」死に至る消極的安楽死。日本では時に犯罪として問題になることがある人工呼吸器の取り外しなどがここに入る。前者は日本では行われていないが、後者は日本の個々の医療現場で常に直面する手法だ。一方で尊厳死は、あらかじめ患者による意思表示を受けて、最初から呼吸器装着などの積極的治療を行わず、苦痛を和らげる処置のみを行い死に臨むこと。積極的、消極的どちらの手法とも重なる可能性がある。

日本の現状はどうですか。
 土屋
 日本では議論以前の下地さえない状態だ。過去に裁判沙汰となったケースがあるのに、国民も医療者もまともに向き合ってこなかった。原因は個別の事例を蓄積してこなかったことがある。本来であれば・・・