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政治

《罪深きはこの官僚》井上俊之 (国土交通省住宅局長)

耐震基準の「穴」を隠蔽して危険を放置

2013年6月号

 地震大国日本の建築物耐震基準に重大な疑念が生じている。国土交通省はこの事実を隠蔽するばかりか、効果に疑問符のつく耐震補強予算を拡大させようとしている。その直接の責任者が住宅局長の井上俊之だ。

 東日本大震災による被害といえば、真っ先に津波によるものを思い浮かべる。揺れによる被害は少なかったとされ、震度七に襲われた宮城県栗原市でも震災三カ月後の調査で全壊住宅四十七棟、半壊は百六十九棟にとどまった。「余震を除いた本震による建物被害は限定的」との公式発表もされている。

 しかし、震災から二年が経過した今頃になって、揺れによる建築物への影響が改めて検証され、「想定外」の被害の実情が明らかになってきた。震災直後、東北大学の多くの研究棟が深刻な被害を受けたが、ほとんどが耐震補強工事を受けたものだった。なぜ一九八一年に施行された新耐震基準を満たす建物が倒壊寸前になったのか。国交幹部はこう説明する。

「東日本大震災では強い揺れが長時間、波状的に東北地方に襲い掛かった。これが新耐震基準の想定を超えた」

 つまり震度・・・

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