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イタリアで名門企業「叩き売り」に

経済破綻国家を襲う「火事場泥棒」

2013年11月号

 経済危機が続くイタリアで、名門企業やブランドの叩き売りが始まった。重病の床にある金融機関が貸し渋るため、航空会社「アリタリア」を筆頭に、各社で極端な金欠が起きている。エンリコ・レッタ首相は選別救済をする以外に方策がなく、国家の債務はさらに膨らみ、構造改革は遠のくばかりだ。 中国資本の買い漁りは顕著  アメリカの債務不履行(デフォルト)の時限爆弾が時を刻んでいた十月中旬、アリタリアの金庫が急速に枯渇していた。「航空燃料供給ストップ」が間近となる中、レッタ政権がギリギリで打ち出したのは、「郵政公社(ポステ)との提携で増資する」という案だった。だが、郵便局が航空会社を救うという窮余の策は、即座に競合他社から抗議を受けた。英国航空とイベリア航空の親会社「IAG」は、「これは国の補助金に他ならない」と、EU競争法違反を欧州委員会に訴えた。欧州委員会は「事前に聞いていない」ととぼけて、時間稼ぎをするしかなかった。  現在のアリタリアは、二〇〇八年に前身の会社が破産した後、その数カ月後に発足した。アリタリア名のブランドは、一九四七年の運航開始以来、年間の経常黒字・・・