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政治

《土着権力の研究》 広島県 常石造船

郷土破壊も辞さぬ「自己中心企業」

2014年8月号

瀬戸内海に浮かぶ島々を望む広島県福山市は、坂で有名な尾道市と岡山県笠岡市に挟まれた、広島市に次ぐ四十六万人の人口を抱える中堅市。重要港として整備されている福山港のある市東部とは反対側、沼隈地区に一大本社工場を構えるのが常石造船だ。

 同社を核とするツネイシホールディングス(HD)は、県内有数の企業であり県東部の備後地方ばかりか県政にまで影響力を行使する。非上場のツネイシHDは創業者の神原勝太郎を皮切りとして、「神原一族の企業」として地元に君臨してきた(現在の代表取締役会長兼社長は伏見泰治)。

「ケチな企業体質」

 二〇〇八年、常石造船の企業城下町が連日テレビや新聞で取り上げられた。瀬戸内海に突き出た、福山市内の沼隈半島。その南部にある「鞆の浦」の景観保全を巡り、ここにテレビカメラが押しかけた。古い港町として歴史背景を持ち、美しい景観を持つ海を埋め立て、橋を架けるという計画に反発の声が上がったのだ。この計画自体は一九九〇年代に持ち上がったものだが、〇八年に突如としてクローズアップされたのは、アニメ監督の宮崎駿・・・