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「劣等生」に転落したマレーシア

ASEANの足を引っ張る「腐敗経済」

2015年1月号

 二〇一五年は東南アジア諸国連合(ASEAN)にとって節目の年だ。年末に予定されるASEAN経済共同体(AEC)発足に向け、準備が大詰めを迎える。域内経済を統合するAECにより東南アジアの経済が活性化することが期待されるが、十二月にミャンマーから議長国を引き継いだマレーシアは、足元の経済に暗雲が漂っている。かつてはASEANの盟主を自任していた同国は、円熟期に向けてさらなる成長が期待されているにもかかわらず勢いがつかない。最大の理由は、この国に染みついた古い経済的しがらみだ。 陰で暗躍する華僑財閥  一四年十二月二日、タイのバンコクで開催されたASEANビジネスサミットで、壇上に上がったマレーシアの実業家フランシス・イェオ氏はこう語った。 「AECの成功には、各国政府が投資家にどこまで透明で一貫した枠組みを提供できるかにかかっている」  当たり前のことを言っているに過ぎず、会場には苦笑いが広がり、拍手もまばらだった。イェオ氏はマレーシアを代表する華人系財閥YTLグループの最高責任者。同氏のグループに代表される財閥は、政治家が結託した不透明な経済的枠・・・