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経済

大塚製薬が「米社買収」でご乱心

赤字ベンチャーに「四千億円」の奇怪

2015年1月号

「アバニア社が開発中のアルツハイマー型認知症治療薬は当社の中長期的な成長にとって重要。(買収価格は)適切な金額だ」。十二月の会見で樋口達夫社長兼CEO(最高経営責任者)はこう言い切ったが、業界筋からは「狂気の沙汰」との声も飛ぶ。何しろ二〇一三年九月期末時点の純資産が日本円でわずか二十二億円強(一ドル百二十円換算、以下同)、しかも赤字垂れ流し企業のM&Aに三十五億三千九百万ドル、約四千二百五十億円もの大金を投じようというのだから当たり前か。  製薬大手の大塚ホールディングス(HD)が米国ナスダック市場に上場する製薬ベンチャー(VB)、アバニアファーマシューティカルズの買収に踏み切る。傘下の中核事業会社、大塚製薬が同国に設立した受け皿子会社を通じ、過去一カ月間のアバニアの平均株価に二四%のプレミアムを上乗せした一株当たり十七ドルでTOB(株式公開買い付け)を開始。今年一月十二日までに発行済み株の全てを取得したうえ、完全子会社化を目指す計画だ。 「盤石」財務に“瑕疵”が生じる  大塚HDは一四年三月期に全世界で五千七百五十七億円、全米だけで四千五百五十五億円の・・・